梟、駆ける。

社会人野球やクラブチームなどややニッチな野球記事や雑記を投稿。

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タイブレークを通じて伝えたい高校野球・社会人野球の魅力〜三菱重工神戸・高砂 守安玲緒投手〜

今年の夏も高校野球の一番の盛り上がり時、甲子園の季節が来た。今となっては社会人野球の沼*1にはまり、プロ野球の試合よりも社会人野球やクラブチーム、アマチュア野球の試合観戦を優先させる私もテレビを通して高校野球を楽しむ夏がやってきた。


そんな今年の第100回全国高校野球選手権大会2日目、2018年8月6日(月)、奇しくも日本にとって忘れられない日*2。社会人野球好きにとってまさか高校野球で"あのフレーズ*3"が聞けるとは思わなかった。


『佐久長聖高校と旭川大高の試合 延長12回を終えても勝負がつかない!!13回に入り、今年から高校野球選手権大会で導入されたタイブレーク制度が用いられます!』


!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?


その時、社会人野球クラスタに衝撃が走る。タイブレークだ。ついに高校野球でタイブレークだ。


まさか高校野球で『タイブレーク』の響きが聴けるとは。


そう『タイブレークの象徴』−守安玲緒(もりやすれお)*4彼を連想させる言葉が、甲子園に響き渡り、高校野球好きの方達にも社会人野球の魅力を伝えられる時が来たとは。


今回は『タイブレーク』を通じて、社会人野球の魅力を伝えてみようと思う。

そもそも『タイブレーク』とはどういう制度であろうか

『タイブレーク』とは社会人野球で時折用いられる制度である。簡単に説明すると下記のような規則が適用される。


・延長12回から攻撃は一死満塁から開始することとする
・打順は好きな打順を選ぶことができる(先頭打者を自由に選ぶことができる)


ただし、上記のタイブレーク制度の内容については昨年度の社会人野球についてものである。今年度より『タイブレーク』のルールは以下のように変更されている。


・延長12回から攻撃は無死一二塁から開始することとする
※高校野球の場合は延長13回から適用
・打順は前の回から継続して打順を回す


※『タイブレーク』について更に詳細を知りたい方は下記の記事が参考になりました。
nlab.itmedia.co.jp


この『タイブレーク』のルールの元で、「送りバントで走者を進めよう」「進塁打のゴロであわよくばヒット」「走者一掃のタイムリーで一気に点差を引き離そう」「バントと見せかけたヒットエンドランで相手を動揺させよう」など様々な展開が予想される。


一方、この条件は相手チームにも適用される事を忘れてはならない。「バントをしてくるだろうから前進守備だ、三塁に投げてアウトをとろう」「塁上に走者がいようが関係ない、真っ向勝負だ」守る立場の方でも色々と考えなければならない。


そのような色々な想像を想起させる『タイブレーク』が佐久長聖高等学校*5 vs 旭川大学高等学校の試合で適用された。夏の甲子園、高校野球で初めて適用された『タイブレーク』その結果がこちらである。


佐久長聖(長野県代表)
20000002000001|5
01200000100000|4
旭川大高(北北海道代表)


この試合は、長野県代表・佐久長聖高等学校が制した。高校野球史上初のタイブレークを制した高校として佐久長聖高等学校高校は今後、長野県の誉れ*6となろう。

『タイブレーク』の申し子・守安玲緒投手

さて、ようやく主題に関する話に移ろう。実はこの『タイブレーク』、社会人野球の公式試合では時折発動することがある

社会人野球を愛する界隈では『鯛フレークタイム』*7『鯛破壊の時間がきた』*8と表現し、『タイブレーク』を心待ち遠しく思う人達がいる程である。

本来の目的は試合の決着を早くつけることかもしれないが、この刹那的な、一球一球に集中する展開が社会人野球を熱くするのであろう。


そして『タイブレーク』を象徴する選手を挙げるとするならば、私も迷いなく『守安玲緒(もりやすれお)』投手を挙げるだろう。


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守安玲緒(もりやすれお)
生年月日 1987年6月26日
身長 182cm
投打 右投右打
最終学歴 富士大学


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三菱重工神戸・高砂(たかさご)を応援するファンの方々


守安玲緒選手は全国区の社会人野球チーム 三菱重工神戸・高砂(兵庫県)の絶対的エースであり、長年先発のマウンドを託されてきた。


そう、彼以外の投手が投げている光景を見たことがない人達が多いほどに。「このチームには投手が1人しかいないのか」「彼はもはや人間ではなく機械ではなかろうか」「労働基準監督署はこのチームを調査すべきだ」*9そのような話が社会人野球界隈ではされるようになっていた。そう、彼は「投げる鉄人」なのである。


そして、私は昨年度の秋、大阪府は京セラドームで毎年開催されている日本選手権大会のあの試合を忘れることはないだろう。


また、この試合の対戦相手『フェデックス』*10長野県代表という必然か偶然か分からない事実がそこには在り、私はこの記事を書きながらわずかながらに震えている。


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ちなみにこの電光掲示板に収まらない社歌があるフェデックスもなかなか印象的なチームである。


第43回日本選手権大会1回戦、三菱重工神戸・高砂 vs フェデックスの試合結果がこちらである。


三菱重工神戸・高砂(兵庫県)
0000001000000003 | 4
0001000000000000 | 1
フェデックス(長野県)


『タイブレーク』とはなんだったのか、試合が終わらない、たこ焼きの如く0が重なる*11。試合が終わらない。加古川の人帰れへん*12


そして、ようやく試合が終わったのが16回、スピーディーな試合展開がモットーの社会人野球だが、試合時間は3時間20分


この試合を守安玲緒は1人で投げ抜いた。当時の『タイブレーク』の条件、『一死満塁スタート』の条件を5回耐え抜いたのである。


当時、現地で観ていた私は涙目を浮かべていた。この三菱重工神戸・高砂というチーム、控えめにいって当時は拙攻が目立つチームであった。点が入らない。「もういいよ守安投げなくて、よくやったよ」そのような思いで試合終盤の展開を見つめていた。動物に例えると、いくら芸をしても餌がもらえない状態。私なら放棄している。*13


しかし、彼は一人で、最後までチームの勝利を信じ、投げ抜いたのである。この日、たまたまでもいいので社会人野球の試合を観に行った人は忘れられぬ試合となったであろう。


このように社会人野球で適用されている『タイブレーク』は、このような熱戦を生んだのである。今後、高校野球でもこのようなドラマが見られるのかと思うと「甲子園に行こうかな」という気持ちになる*14

高校野球好きが社会人野球の試合に、社会人野球好きが高校野球の試合に、そのような架け橋的存在に『タイブレーク』があるような。そんな気がした。

三菱重工神戸・高砂のその後、そして伝説へ

さて、そんな社会人野球の代名詞・守安玲緒選手が所属している三菱重工神戸・高砂、実は今年度の都市対抗野球大会準優勝という快挙を成し遂げた。

そして、決勝戦のマウンドにたったのも守安玲緒投手であった。

そう、まだ彼はバリバリの現役であり、これから少なくとも数年は彼の有志を社会人野球の試合で観ることができるであろう。是非、野球好きの方には社会人野球を観に来て欲しい。


そして、現在、三菱重工神戸・高砂では尾松義生という投手が次期エースとして台頭しつつある。今では守安玲緒以外の投手も登板しており、守安投手の体を憂いていた私としてはホッとしている。


三菱重工神戸・高砂硬式野球部公式サイト - 選手紹介mhikobe-stand.mhi.co.jp


尾松選手自身も『守安重工守安・守安が守安重工守安・尾松に変わっていくところ』を目指し、野球の練習に励んでいる。


最後になるが、都市対抗野球大会近畿二次予選でも守安投手一人で『タイブレーク』の試合を投げ勝った試合があるので紹介したい。ミキハウスとの試合である。


三菱重工神戸・高砂
000000001000004 | 5
000010000000000 | 1
ミキハウス

※守安玲緒15回無四死球完投勝利


守安玲緒投手の伝説はまだまだこれからも続いていく。

*1:一般人は決してはまってはいけない

*2:黙祷

*3:鯛破壊の時間だあああああ

*4:MORIYASU is GOD

*5:サマーウォーズを頭の中で連想したのは私だけであろうか

*6:新谷くん一週間くらい旅行したことあるけど良い所でした

*7:鯛ごはんを炊きだす人もいる

*8:安直な和訳である

*9:労基法違反はさすがに草

*10:海外を駆け巡る運送会社 FedExである

*11:福本さんも面白い表現をしたものだ

*12:きちんと終電までには帰れました

*13:横浜の闇

*14:熱中症にはご注意ください

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